メディア別チェックポイント

受け手との相互作用の場合

受け手との相互作用とは

 直接話ができるという点で、この方法はたいへん有効です。 この方法の主なものとしては、公聴会、市民助言(諮問)委員会、フォーカスグループ、テレビ公開討論などがあります。 公聴会は、最もよく行われていますが、コミュニケーションという点では最も効果的ではない方法です。


【直接対話を行う場合の留意点】

□ あなたの組織も受け手も納得できる方法を目的に合わせて選びましょう。(表参照)

  • 対象となるリスクに関係する人々の範囲や関心,リスクの深刻さ,緊急性,法律上の責任の所在等によって,「誰をどのような目的で関わらせるか」が変わります。目的にあった適切な手法を選びましょう。原則は,'できるだけ多くの人を,できるだけ早い段階から,できるだけ深く関与させる'ことです。

□ 組織全体、特にリスク評価やマネジメントの関係者が、受け手の関与を受け入れることについて合意していなければなりません。

  • 誰かが受け手の関与を制限しようとすると、この方法は決して成功しません。
  • 組織は、受け手の関与によって彼ら自身が問題をコントロールできなくなるのではないかという点を最も問題視します。
  • 組織全体を納得させるためには、計画をたて、 受け手の関与 の意義や成功例などを示すことが重要です。


□ 受け手の関心が高いことが重要です。

  • 受け手の関心が低いと、出席率が悪かったり、無責任な発言になったりしてしまいます。
  • 多様な人々に関連した問題の場合、参加者の代表性や情報の公開に留意する必要があります。
  • リスクの考え方や技術の専門的な内容も理解してもらう努力が欠かせません。
  • 熱心な参加者ほど、結果の反映を期待することを忘れないようにしましょう。


手法長所短所
公聴会 実施は容易
最低限の法的要請に応えることができる
敵意を増すかもしれない
声の大きな意見にのみ対応することになる
不満をもった聴衆は立ち去ってしまう
フォーカスグループ
特定期間、特定の目的のために議論する
小規模(15名以下)
目的と期間が明確
組織はそれほど嫌がらない
組織側からの返答を求める
参加者と時間に制限がある
コンセンサス会議
Citizen Jury
専門家の意見を聞きながら提言をまとめる
小規模
目的と期間が明確
専門的な内容を理解した上での提言となる
検討事項の抽出に有効
参加者と時間に制限がある決定には向かない
組織と敵対する専門家にも関与してもらわなければならない
助言委員会
様々な問題について人々がどのような関心をもっているかを比較的長期にわたって伝える
比較的長い期間設置する
参加者はリスクについて学ぶ機会が多い
決定に対する助言が可能
長い期間の間に効果が低くなるかもしれない
組織側からの返答を求める
市民検討会
リスクを軽減する方法を人々自身が決定する
参加者の意欲は高い
リスクに影響を与える
参加者にとってのみ効果的
リスクマネジメントへの参画 参加者へのリスク教育が可能
参加者に権限を与える
参加者はリスクに影響を与える
参加者はリスクについて学ばなければならない
参加者にとってのみ効果的

【公聴会の留意点】(→より具体的なチェックポイントは、住民集会の場合)

 公聴会は,法律で実施を求められている場合もあり、非常に頻繁に行われている方法です。 多様な人々に関連した問題の場合は、重要な方法になります。ただし、成功する公聴会はごくまれです。 公聴会は一方的なコミュニケーションになりやすく、人々の関心事に十分注意を払うことが難しいからです。 以下の点に注意し、さらに状況別チェックポイントも参照してください。


□ できるだけ多くの人が参加できるように、開催場所や時間帯に配慮する。

  • 公聴会に出るために仕事を休んだり、予定を変更したりするのは特別な人だけです。あなたやあなたの組織の都合ではなく、参加者の都合を考えましょう。
  • 不快感を持たない場所、仕事や社会活動に支障のない時間帯、参加者を収容できる十分な広さ、地域の大切な祭日を避けるなどの配慮が必要です。

□ 対象地域が広範囲な場合は、できるだけ各地で開催することが望ましい。


□ 重要な意思決定者を参加させること。

  • 組織のトップが参加しない場合、人々はあなたの組織が住民の意見に関心がないと思い、公聴会は形式であると感じてしまうでしょう。
  • 公聴会で出される質問には、組織のトップや問題の責任者にしか答えられないこともあります。

□ よいモデレータ(会議を時間通りに進行でき、人々の質問と関心事に配慮し、かつ信頼されていること)を選択すること

  • モデレータが組織側の人間では、公聴会そのものを信頼してもらえません。どのような人物を選べばよいかは、ファシリテータの資質を参照してください。

□ 記録をとること

  • メモをとるのは、人々の関心に配慮しているという印象を与えますが、記録としては不十分です。メモの内容は、人々の意見に対する「あなたの見解」であり、人々の意見そのものではありません。
  • 人々の意見を細部まで記録することは、後でそれらに対応するとき非常に重要です。「人々が何を言っているのか」を複数の人と聞いて判断し、適切な返答や対応を考えましょう。

□ 質疑応答の時間を十分とること

  • 説明時間は15分程度にしましょう。
  • 質疑が出尽くすまで質疑応答の時間をとりましょう。
  • もし予定時間を超過するなら、延長するか別の機会を設けるかを参加者に問いかけて変更しましょう。
  • 普通の人は簡略に質問をすることに慣れていません。話が長くなってもいらいらした態度を示したり、発言を途中でさえぎろうとしたりしてはいけません。意見の要点があいまいなときには、「あなたの意見(質問)はこういうことですか?」と確認しましょう。

□ 人々の質問や意見に(できるだけ迅速かつ個別に)対応すること

  • 公式記録を公開しても、ほとんどの人は読みません。質問者には、一人一人に電話や手紙を出すなどのきめこまかい対応が必要です。


【グループでの議論や作業による方法の留意点】

 この方法には,様々な委員会やワーキングによる方法が含まれます。

□ 有益な議論ができるメンバーの数は15〜20名程度。


□ グループのメンバー全員にとって都合がよい日時や場所を選ぶこと。

  • 組織との独立性が重要な場合は、組織の施設を使わないようにしましょう。

□ グループの目的・目標・制約と可能性・期待される結果を明確にすること。

  • 何をどこまで議論するのかを最初に明らかにしておきましょう。
  • ただし、制約の範囲内であれば議論するテーマを変更する柔軟さも必要です。
  • 柔軟さは、メンバー構成や期間についても求められます。

□ プロセスや決定方法を明確にしておくこと。


□ プロセス全体の柔軟さを失わないこと


□ 組織側の支援を確実なものにしておくこと。



【リスクマネジメントへの参画を求める場合の留意点】

 あなたの組織はリスクマネジメントへ市民を参加させることにかなり抵抗を感じるはずです。 しかし、これは,有効なマネジメント計画と人々からの協力、社会信頼を得る最も効果的な方法です。

□ 目的と目標を明確にし、参画によってどのような利点があるかを示すこと。

  • 人々自身もどこまでできるのか疑問に思う場合があります。
  • 専門的判断を要する決定など無理な目的・目標を設定しないようにしましょう。
  • 人々の公共心や奉仕精神に頼るのではなく、具体的なメリットを示しましょう。

□ どこまで市民を関与させるのかについて決めること。


□ 適切な参加者を選ぶ。

  • 活動に時間を割ける関心のある人々がよいでしょう。
  • 参加しない他の人々から信頼され、代表者としてみなされる人々を選びましょう。

□ 適切な訓練を受けた人を選ぶか、必要な訓練をすることを考える。

  • できれば,リスクやリスクマネジメントについて理解している人がよいでしょう。
  • リスクやリスクマネジメント、議論する問題についての基礎資料を用意しましょう。
  • 専門家の話や施設見学などで理解を深める機会をつくりましょう。

□ 市民に広く情報を流せる人を選ぶ。

  • あなたの組織からよりも市民からの情報提供の方を人々は信頼します。彼らに情報を流してもらいましょう。

□ 組織の支援を明らかにする。

  • この活動を記者会見で話したり、組織からの情報冊子に名前を載せたりすることで、組織が活動を重視していることを示しましょう。

□ 労働組合へ説明し、理解を得ておく。

  • 市民が関与することは、組織の役割分担、つまり労働者の仕事に変化をもたらすことかもしれないので,活動の目的や範囲をしっかり説明しておきましょう。



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