リスク・コミュニケーションにおける組織問題

不十分な組織的取り組み

 リスク・コミュニケーションの成否は、あなたの組織がどのくらい問題を重視し、協力的であるか、組織として対応しようとしているかに依存しています。
(→ リスク・コミュニケーションの成功例・失敗例

 リスク・コミュニケーションを失敗させる組織要因には次のようなものがあります。



不十分な資源

 効果的にリスクを伝えるためには、ヒト・モノ・カネが必要です。残念なことに、多くの組織では、リスクの技術的な問題 (リスクアセスメントやリスクマネジメント)には多くの資源を配分しますが、コミュニケーションは全く忘れられていることがあります。 例えば、計算用ソフトウェアには金を惜しまない組織が、受け手が読みやすいようなリスクメッセージをつくるための、 それほど高価でもないプリンターの購入をいとも容易く拒絶してしまいます。

 リスク・コミュニケーションは新しい手法であるため、マネージャーや意思決定者らにその重要性を納得させるデータが不足しています。 法律や規制に基づくリスク・コミュニケーションプログラムを開発している人々は、リスクマネジメントに受け手を取り込まなければならないことや、 それゆえにリスク・コミュニケーションが求められていることを法律に沿って指摘できるでしょう。それでも組織は、 彼ら自身が危機的状況にあるときにはこうした要求など無視してしまいます。

 法的な要件ではない場合、リスク・コミュニケーションの成功や失敗の事例を示しながら、いかに事業活動に影響を与えるかを示しましょう。


難解な審査と承認の手続き

 不適切で時間のかかる報告や承認経路は、迅速な情報提供を妨げます。

 手続きを変える必要があることをマネージャーや意思決定者らに示すためには、受け手や状況の分析が必要です。

特に受け手が法的な対応をとる(訴訟を起こす)恐れがあるときには、急いで検討することが必要でしょう。 もちろん、手続きの変更については、必須の審査の有無や様々な法律や規制との関連、受け手の信頼するしくみ、検討にかけられる時間などを勘案しなければなりません。

 しかし、重要なことは、どのような場合においても、情報はできるだけ早く公表される必要があるということです。


手続きを簡素化した米国国立研究所の事例

組織内の対立

 組織の中でリスク・コミュニケーションに対する認識が違っていたり、異なる目的をもっていたりする場合、成功は危ういでしょう。

 例えば、研究開発部門は、市民の関心に見合った情報を一般の人々に与えるという方針をもっているかもしれませんが、 広報部門は組織にとって都合のよいことのみが公表されるべきだという態度をもっているかもしれません。

 しっかり考えなければならないのは、リスクの伝達はしばしば組織にとって最悪の情報を公表することを要求するということです。

 リスク・コミュニケーションプロジェクトが始まる前に、組織内にどんな対立があるのかを調べておく必要があります。 あなたが必要とするリスクデータを保有し責任をもっている部門と、どこまで公表できるのかについて必ず議論しておきましょう。 リスク・コミュニケーションによって、組織全体とその部門が利益を得る(人々から信頼される、合意がたやすくなるなど) ことを示すことが組織内対立を避ける助けになるでしょう。


不十分な情報

 あなたが適切なコミュニケーション計画をつくるために必要な情報が得られない場合、リスク・コミュニケーションは失敗してしまう可能性があります。

 例えば、あなたは、リスクアセスメントが終了した後に、できるだけ早くファクトシートをつくり、ミーティングを開始しようと計画したとしましょう。 しかし、もしリスクアセスメントの終了予定が知らされていなければ、計画をたてることはできません。 また、あなたがリスクアセスメントの進捗状況について正確な情報を得ることができず、あいまいな情報に基づいて、 いつ、どこでミーティングが行われるかをすでに発表してしまったとしましょう。その後で、リスクアセスメントが遅れ、 1ヶ月後まで終了しないことが告げられたとすると、あなたは発表した情報を撤回し、計画を策定しなおさなければなりません。 市民は、こういった遅延は組織が情報を出したくないためであると考えてしまうかもしれません。1ヵ月後、 リスク・コミュニケーションが開始された時には、あなたやあなたの組織に対する信頼は地に落ちてしまっており、 不信感の中でコミュニケーションをしなければならなくなってしまいます。

 もちろん、現実的で柔軟なプランやスケジュールを立てることによって、この問題は解決できます。 しかし、現実にすばやく対応し計画を調整するために、組織の関連部署との情報交換が円滑に行われなければなりません。




参考文献:
Lundgren, R. Handbook of Risk Communication
キーワード:
リスク、リスク・コミュニケーション
関連項目:
関連サイト:



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