リスク認知の2つの次元

 様々な事象のリスク認知を調べた研究を通じて、私たちは、国や性別を問わず、 リスクを主観的に評価する際に共通した2つの視点をもっていることが明らかになっています。

 リスクを評価する際の2つの視点とは、「恐ろしさを感じるか」(恐ろしさ因子)と「知っているものか」(未知性因子)です。

 「恐ろしさを感じるか」どうかには、1.自発的なリスクか、2.個人でコントロールできるか、3.被害は公平か、4.災害の範囲は広いか、 5.一度に多くの被害者が出るか、6.死につながるものか、8.次の世代、将来世代への影響があるかが関わってきます。

 「知っているものか」どうかには、7.滅多に発生しないものか、9.進行過程が見えやすいか、10.よく知られたものか、11.新しいリスクかが関わってきます。

図1 様々な技術に対するリスク認知, Slovic(1987)


 一方、個別の事象のリスクが「恐ろしさを感じる」ものかどうかや「知っているものか」どうかについては、 国による違いが観察されています。次の図は、米国と日本の大学生の調査結果を比較したものです。

 米国の大学生の場合、<よく知らないものは恐ろしいと感じる>という恐ろしさ因子と未知性因子との相関が見られますが、 日本の大学生の場合、このような相関は見られません。

図2 日米大学生のリスク認知の比較


補足:
このような結果になった要因のひとつは、米国人学生は内容まで知っていないと「知っている」と答えないのに対して、 日本人は言葉を知っているだけでも「知っている」と回答しやすいのではないか、という回答特性の問題があります。 また、米国人学生はリスクに対して積極的に関わろうという姿勢が日本人学生より強いことが観察されており、 「知っていればリスクに対処できる」と考えやすいのではないかとも考えられます。

【出典】
Randall R. kleinhesselink and Eugene A. Rosa, "Nuclear Trees in a Forest of Hazards: 
A Comparison of Risk Perceptions between American and Japanese University Students",
pp. 101-120, ”Nuclear Power at the Crossroads: Challenges and Prospects for the Twenty-First Century” edited by T.C.Lowinger and G.W.Hinman, ICEED, 1994


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