リスク・コミュニケーションの定義



リスク・コミュニケーションとは、あるリスクについて直接間接に関係する人々が意見を交換することです。

 リスク・コミュニケーションは、 誰かがリスクについて教えたり、リスクが小さいことを説得したりすることではありません。 リスク・コミュニケーションの目的は、人々にリスクに関する情報を伝え、思慮深く判断し建設的な意見を述べる人を増やすことです 。これは、専門家と同じように考える人を増やすことでも、人々を教育することでもありません。

 リスク・コミュニケーションの場では、すべての人が重要な役割を担っています。行政や企業・専門家はリスク評価の数値や リスク管理の方法を伝える主たる情報の送り手ですが、市民の科学技術や政策に対する考え、人々が漠然と感じている不安や 行政や企業に対する不信感などの情報を聞く情報の受け手でもあります。市民は、リスクの本質を知り、リスクの程度について 学ぶという点で情報の受け手ですが、リスクをどう感じるか、リスク評価や管理の方法が現実的なものかどうかを伝える情報の送り手にもなります。

 行政や企業・専門家にとっても一番の懸念は、人々がリスクを客観的に理解できないのではないか、という点でしょう。 確かに、一般的にリスクを伝えると、人々の不安感は強まります。しかし、リスクを伝えた人への信頼も高まります。 不安を解消するために行政や企業のリスク管理の方法を変えるように求められることがあるかもしれませんが、 話し合うことによってよりよい管理方法を発見できる可能性もあります。そして、リスクが管理できることがわかれば 安心感と行政・企業への信頼感が高まります。このように、リスク・コミュニケーションでは、意見交換の過程で どのような関係を作っていくかを重視しています。

 リスク・コミュニケーションには時間とお金と組織の支援、そしてあなたの情熱が必要です。 手っ取り早い解決策を探している人は別のサイトへ行ってください。 もし、あなたが「リスク・コミュニケーションは必要、でも…」と躊躇しているなら、 人々とコミュニケーションしなかった時のリスクを考えてみましょう。 あなたが伝えなかったばかりに人々がリスクを知らず危険な場所に行き被害を蒙ったと訴えてきたら、 あなたやあなたの組織の責任が問われることになります。 コミュニケーションをしなければ、決して人々と'よい'関係をつくることはできません。 リスク・コミュニケーションは、人々のためではなく、あなた自身やあなたの組織のために必要なことなのです。




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